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★続・浴室に面する中庭がある銭湯★(1010誌 103号掲載バックナンバー)

 ちょっと不思議で、わくわくする空間。昔ながらの銭湯を訪ねると、そんな魅力のある空間に出会う事がある。男女をしきる壁の代わりに中庭が配置されている銭湯・東京浴場は、とても印象的な空間タイプだと思う。基本は浴室の奥に浴槽が配置された、天井が高い関東型銭湯で、その珍しい変形バージョン。都内にはこの空間タイプの銭湯は、本誌97号で紹介させていただいたおとめ湯と、ここだけだ。
 この庭が造られた昭和30年代は銭湯の隆盛期であり、オーナーは競って普請にお金をかけ、他店との差別化をはかっていた。ここ東京浴場の先代は、鯉の養殖が盛んな新潟は小千谷の出身で、鯉が映えるような庭がある銭湯造りを指向したという。男女脱衣室の外側にも立派な庭が残されており、先代の意図が現在まで大切に引き継がれていることがうかがえる。
 現代では、なかなかこのような「いい意味での無駄」な空間は設計しにくい。「そこは金を生み出す場所なのか?」というところに極端に価値観の比重が置かれてしまっているからだ。庭と縁側があった場所が、いつしかコインランドリーに取って替わってしまったのが現代の現実だ。
 価値観は時代によって変化する。「緑」の大切さが切実に語られ始められた今「銭湯の中庭」は都会の生活者にとって、ひと時の豊かな時間をもたらす貴重な遺産と言えるかもしれない。

【DATA】とうきょうよくじょう
住所:品川区大井2-22-16
電話:03-3771-4959
営業時間:15:00~23:30
休業日:月曜日
交通:京急東北線[大井町駅]より徒歩7分
東京銭湯お遍路マップ:33ページ品川区33番

個性派銭湯セレクション その七 品川区_東京浴場_f0091934_1638068.jpg

日中の中庭は、明るい自然光を浴室にもたらす。カラン前の黒い部分はガラス張りで、池の中をのぞく事ができる。

個性派銭湯セレクション その七 品川区_東京浴場_f0091934_16381726.jpg

脱衣室側にも立派な庭があり、池には鯉が泳ぐ。

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浴室略平面図。男女浴室の中央に中庭が配置されている。
# by space88 | 2010-04-01 16:35 | ★1010/個性派銭湯セレクション
★畳敷きの脱衣室!?★(1010誌 102号掲載バックナンバー)

 気持ち良い、そして落ち着ける、一番の床素材とは?…と聞かれたら、多くの日本人が「畳」を挙げるだろう。近年、技術開発により浴室で使用可能な防水畳が登場し、高級旅館や和風SPAなで見られるようになったが、大黒湯では20年以上も前から脱衣室に畳が使われているという。早すぎる(?)ハシリであろうか。
 ここ大黒湯以外で銭湯の脱衣室に畳が敷かれている例を私は知らない。大黒湯ではどのような思いから畳敷きを始めたのだろうか?興味しんしんで店主さんに聞いてみると…「思いつきで先代が敷いたのが始まりです」というお答え。気になるメンテナンス面も「掃除機がけに、拭き掃除と、普通以上に大変ということはそれほどないですよ…」と、あっさりしたもの。下地の一部に腐りが生じた事もあったらしいが、特に大きな問題は無い様子。確かに一年ほど前に敷き替えられたという床一面、とてもきれいな状態だ。
 実はこの畳、正確に言うと「畳風」の特注ゴザ敷きなのだ。ゴザを畳縁で短辺方向に3枚ほど繋ぎ合わせ、木の床上に敷きつめているわけである。よって一般の畳にあるべき、長辺方向の継ぎ目が無い。下地の畳床が無い分、乾燥しやすいのだ。
 お客さんの使い方を観察してみる。びっしょり濡れたまま脱衣室を使うような人はまずいない。せっかくの畳空間なのだから、気持ち良く使おう、というふうなのだ。「しつらえがその空間にいる人の行動を規定する」ということなのかもしれない。足裏に触れる畳の感触を楽しみながら、そんな事を考えた。

【DATA】だいこくゆ
住所:板橋区大谷口1-47-5
電話:03-3974-2953
営業時間:15:00~24:00
休業日:火曜日
交通:東京メトロ有楽町線[千川駅]より徒歩7分
東京銭湯お遍路マップ:80ページ板橋区10番

個性派銭湯セレクション その六 板橋区_大黒湯_f0091934_16481621.jpg

通常より広めの脱衣室なので、畳の良さがいっそう引き立ち、ゆったり寛げる空間になっている。

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小上り縁台も畳敷き。囲碁と将棋のセットが粋だ。

個性派銭湯セレクション その六 板橋区_大黒湯_f0091934_16483866.jpg

図:脱衣室略平面図。中央にロッカーが無く圧迫感が少ない。
# by space88 | 2010-02-11 16:46 | ★1010/個性派銭湯セレクション

湯フェスvol.5@千代の湯

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■開催日時:2010年1月16日、17日■

 目黒区は千代の湯さんのリニューアルオープンを記念し「湯フェス05@千代の湯 ペンキ絵×フラダンスライブ」と名うち、二日間にわたるイベントを開催いたしました。1/16は、着衣イベント、1/17は入浴イベントです。ここでは16日の、二つの富士山を同時に描きつつ、フラダンスライブがJOINTされたライブコラボレーションの様子を紹介させていただきます。
 千代の湯は、現代に生きる銭湯の姿と昔ながらのお風呂屋さんの良き部分の融合を目指し、リニューアルの設計に取り組みました。そのような意味から、銭湯特有のアイコンとも言える"銭湯ペンキ絵"を未来に継承すべく、今では日本で2人になったとされる伝統ペンキ絵師の丸山清人師と中嶋盛夫師へ富士山作画を依頼しました。二人のペンキ絵師による二つの富士山がある銭湯というのはおそらく全国ではここだけだと思われます。約3時間のライブペインティングの間には、町田忍氏のペンキ絵の解説、そして地元の銭湯を盛り上げるべく、フラダンススタジオのカプアリコさんによるダンス+生演奏ライブが行われました。
 通常の銭湯ではあり得ないほどのお客さんの入りで、会場は大にぎわい、大盛況のうちに幕を閉じました。来場者数は500人強。御来場の皆様、出演アーティストの皆様、スタッフ関係の皆様、本当にありがとうございました。

■出演者■

ライブペイント:丸山清人(女湯担当)、中島盛夫(男湯担当)
フラダンス:スタジオカプアリコ(Kaui Miyuki,Naia,Kousuke&子供ダンサーズ)
ペンキ絵解説:町田忍

■企画運営■

千代の湯+湯フェス実行委員会

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   開場前からたくさんのお客さんに並んでいただきました。

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   中島さんが白いキャンバスに筆を入れました。ラフな下書きが見えます。

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   ほどなく山頂部分が描かれました。赤富士です。

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   ダイナミックなタッチで中腹部分に色が入りました。迫力の筆さばき。

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   丸山さんの富士山は空がオレンジ色。朝焼けのイメージです。少し中島さんがお手伝い。

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   男湯側の状況。熱気ムンムン。絵師の筆にも力がみなぎります

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   女湯側の状況。この沢山のお客さんを飽きさせない、楽しい解説をしてくれたのは町田さん。

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   富士山をバックに踊るフラダンサー。火山に捧げるダンスです。

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   笑顔と腰使い、そして華やかな衣装で会場に華を添えてくれました。

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   小さなフラダンサーズ。入口でウェルカムフラを披露してくれました。かわいい!

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   急遽生ギターのKousukeさんが演奏してくれる事になりました。生はいいね〜。

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   脱衣場では銭湯カフェを営業。普段は石けんやタオルを受け取る小窓がオーダー口に。

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   ペンキ絵師さんのパレット。フツーのオイルペンキで、元は3色しか使わないと言うからすごい。

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   丸山さん。他には無い、優しく素晴らしい富士山を描いていただきました。

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     左から中島さん、お弟子さんの田中さん、そして解説の町田さん。

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   オーナーさん、出演者&スタッフの皆さん、本当にありがとうございました!!
   ■写真 : Katsumi Saito
   ■千代の湯リニューアル設計:今井健太郎建築設計事務所
# by space88 | 2010-01-22 15:52 | ★湯フェス
★脱衣室が二階建て!?の銭湯★ (1010誌 101号掲載バックナンバー)

 桃仙浴場。一風変ったネーミングは、桃が中国では縁起が良いとされている事から名付けられたという。現在のビル型に建て替えられたのは昭和40年代前半。店名の印象そのままに、エントランスから内部の造りに至るまで、とても個性的な空間となっている。
 店内に入りると、まずは浴室入口のわきにある階段に驚かされる。これは脱衣室の2階にアプローチしており、上階は休憩&化粧スペースとしてしつらえられていてる。浴室が二層になっている例はたまにみかける事があるが、脱衣室が二層になっている例は非常に珍しい。この造りは浴室側からガラスの壁越しに見え、印象的な雰囲気を空間にもたらしている。
 もう一つ桃仙浴場を個性づけているのは黄金色のお湯。温泉表示の申請はしていないものの、高い濃度の鉄分が含有されている事が想像される。有馬温泉などで知られる含鉄泉と同様の部類だ。とても良く暖まるこのお湯を目当てに遠方から訪れるお客さんも少なくない。通常の白湯もあるのだが、実は二種の湯の源泉は同じ。つまり白湯は鉄分を含む深度300mほどの井水をなんと5時間もかけて濾過し、透明にしたものだという。システムの維持とメンテナンスが大変であろう事が想像される。
 空間と湯質の個性化。都内では最小規模の部類に入る営業面積をカバーするために工夫された造りである。しかし狭いからこそできる個性的な空間がある。桃仙浴場でお湯をいただく時、銭湯空間の可能性をいつも様々に考えさせられる。

【DATA】とうせんよくじょう
住所:豊島区西池袋3-7-3
電話:03-3981-6635
営業時間:15:00~23:00
休業日:月曜日
交通:JR山手線[池袋駅]より徒歩7分
東京銭湯お遍路マップ:65ページ豊島区15番

個性派銭湯セレクション その五 豊島区_桃仙浴場_f0091934_18241954.jpg

写真1:浴室入口のわきにある階段。

個性派銭湯セレクション その五 豊島区_桃仙浴場_f0091934_18252549.jpg

写真2:階段上には休憩スペースが。

個性派銭湯セレクション その五 豊島区_桃仙浴場_f0091934_18261364.jpg

写真3:浴室から見る二層の脱衣室。

個性派銭湯セレクション その五 豊島区_桃仙浴場_f0091934_1826597.jpg

写真4:鉄分を含む黄金色のお湯。

個性派銭湯セレクション その五 豊島区_桃仙浴場_f0091934_18274440.jpg

写真5:女性側脱衣室の二階空間。

個性派銭湯セレクション その五 豊島区_桃仙浴場_f0091934_18281869.jpg

図:黄色に着彩された部分は二階がある。
# by space88 | 2009-12-05 18:15 | ★1010/個性派銭湯セレクション
2010年1月16日〜17日。

25年ぶりにリニューアルオープンする千代の湯(目黒区)の記念イベントとして湯フェスを開催します。
第5回目となる今回、初日の16日は銭湯「富士山ペンキ絵」のライブペインティングを
フラダンスとのコラボレーションをおりまぜながらご覧いただきます。
出演は都内でも数人となってしまったホンモノのペンキ絵師、丸山清人氏と中島盛夫氏2名が共演。
同時に2つの富士山を描くという、非常に貴重な内容となります。
実況解説には町田忍氏が登場。銭湯の知識においてこの方の右に出る人はいません。
ペンキ絵に関する楽しくてアツ〜い、そして濃ゆ〜い解説が聞けそうです。
フラダンスは、千代の湯とかかわりの深いフラスタジオ/KAPUALIKOが出演。
「銭湯=富士山=火山=フラ」ということで、地域に根ざす癒しのコミュニティがイベントに花を添えます。
その他、銭湯空間を利用した「カフェ」「足湯」「銭湯グッズ販売」などの特別メニューを開催予定。
どうぞお楽しみに!!(注:16日は無料。入浴イベントではありません)

そして17日は、本オープンを控えてのプレオープン入浴イベントとなります。
通常の営業とは少し異なるプレゼントや店内の仕掛けなどを御用意して皆様をお迎えいたします。
(17日は有料。¥450-の入浴料金をいただきます)
 
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★ 日時・会場 ★

2010年

1月16日 土曜日 14:00〜20:00 入場料: 無 料
1月17日 日曜日 15:30〜20:30 入場料:¥450-

@ 千代の湯 東京都目黒区鷹番2-20-3 →MAP

 
●16日(土)●・・・・銭湯ペンキ絵×フラダンスLIVE!

☆ OPEN 14:00 〜
☆ 銭湯ペンキ絵ライブペインティング 14:30〜
☆フラダンスLIVE 〜出演時間未定〜
☆ 銭湯空間を利用したカフェ&混浴足湯 14:00 〜 20:00(足湯御利用の方はタオルを御持参ください)
☆その他「銭湯グッズ販売」などの特別メニューを開催予定。


●17日(日)●・・・・プレオープン入浴イベント

☆ OPEN 15:30 〜 20:30

自慢の炭酸温泉&軟水風呂をいち早く体験。通常営業に加え「銭湯グッズ販売」などの特別メニューを開催予定。

☆特別サービス☆ 先着200名様に銭湯グッズをプレゼント。

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★ 出 演(16日) ★

丸山清人(ペンキ絵)

中島盛夫(ペンキ絵)

フラスタジオ カプアリコ(フラダンス)
http://www.kapualiko.net/

町田忍(庶民文化研究家/実況解説)
http://www.edo.net/machida/
 
 

★ 出 店(16日) ★

りり〜ぶ(銭湯カフェ)
http://ameblo.jp/relieve-okinawa/

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★ 湯フェスの記録 ★

湯フェスvol.1〜vol.4の記録です。

→湯フェスvol.1    →湯フェスvol.1

→湯フェスvol.2    →湯フェスvol.3

→湯フェスVOL.5 オフィシャルサイト

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★ INFO ★

○ 千代の湯「本オープン」は2010年1月19日、15:30〜を予定しています。
○ 17日は先着200名様にはプレゼントを差し上げます。(おたのしみ銭湯グッズなど予定)
○ オーガニックなフード&ドリンクmenuをご用意いたします。どうぞお楽しみに!
○ 16日は入浴イベントではありません。入浴はできませんのでご了承ください。
○ 会場の駐車場はご利用できませんので、電車等公共機関利用にての来場にご協力お願いします。
○ イベントに関する「千代の湯」へのお問合せはご遠慮ください。
○ お問合せ先:space88@blue.plala.or.jp
○ ボランティアスタッフ募集中。↑(イベント当日13:00〜21:00を予定)
  ご希望の方はメールください。詳細内容を返信いたします。

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協力 : 〜ココロのふろや〜 千代の湯
設計:今井健太郎建築設計事務所

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高い天井とゆったりとした浴槽の中、体温を上げて汗をかく。鏡を観て顔を洗う。
循環する血液とエネルギー、解放される心と毛穴。そして浄化される体と魂。
こんな気持ちいい空間、行かなきゃ損!あなたの街でもきっとお気に入りの銭湯が見つかるはず。
さぁ、このイベントをきっかけに銭湯へ行こう!!

企画運営:湯フェス実行委員会
# by space88 | 2009-12-02 20:22 | ★湯フェス

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


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