第一宝湯(杉並区)
2006年 10月 09日
杉並の住宅地にひょいと頭を見せる煙突。その煙突を目指して歩くと重厚な破風を持つ第一宝湯の入口が現れる。JRまたは丸ノ内線荻窪駅から徒歩で約10分。話をしていただいたのは、杉並銭湯きってのおしどり夫婦、金子朝男さんと哲代(たかよ)さんのお二人。おしどりなのには理由がある。これまで転々と都内各地の風呂屋の番台を預かって、二人で苦労を分かち合って来たからだ。そして現在の第一宝湯を切り盛り始めたのが、平成9年から。営業時間ずっと、フロントから裏方まで全ての仕事を二人でこなしているというのだから頭が下がる。薪で湯を沸かすのも、もちろん二人の仕事となるが、これがなかなかの重労働。ガスのようにスイッチポンでほったらかしておくわけにはいかない。朝男さんは、家事も並行してきりもりする哲代さんのために、くべやすい大きさの薪を釜の近くにそろえて置いておくのだという。現在、開店時から閉店時まで通して薪で湯を沸かす銭湯は、都内では非常に珍しくなってしまったが、薪で沸かした湯は本当に柔らかく、肌にやさしい。これはこの店の造りと同様、古き良き銭湯の名残であり、ここの自慢の一つである。
建築的に少し変わっているのがフロントの形式。もとの建物は、昭和の銭湯らしく番台形式であったが、平成5年に現在の形式に中普請された。しかしフロントの壁は2M程度の高さで、天井には達していないため、閉鎖感が抑えられている。そして天井が高い格天井の脱衣室には、有名人のサイン色紙がポツリポツリ。ココリコさん、柄本明さん、千田光男さん、内山信二さん、体操のお兄さんの佐藤弘道さん、などの名前が並ぶ。不思議と芸能界との縁があるらしい。ペンキ絵のある浴室はもちろん天井が高い。白いタイルが使われていて、清掃もきっちりされているため明るい印象。帰り際にお湯をいただいた。やはり柔らかい!やはり、薪で沸かした湯の質は明らかに違う!この湯から、じわ〜と感じる優しさは、おしどり夫婦の愛情の反映なのかもしれない。
【DATA】だいいちたからゆ
住所:杉並区天沼3-38-12
電話:03-3398-2392
営業時間:16:00~25:00
休業日:水曜日
交通:JR中央線[荻窪駅]よりバス[杉並第5小学校前]下車、徒歩3分
写真(a)重厚な破風を持つエントランス。
写真(b)おしどり夫婦がお店を切り盛り。
写真(c)中島氏による定番富士山のペンキ絵。
写真(d)立派な格天井の脱衣室天井が高い。