個性派銭湯セレクション その十一 練馬区_松の湯
2011年 02月 23日
銭湯には、良くも悪くも機能性や合理性から、空間の各部位に標準的な納まりや寸法がある。しかしその「標準」が当てはまらないのが、松乃湯の空間だ。
まず目に付くのが洗い場の蛇口と蛇口の間隔。昔ながらの寺社造りの木造銭湯などでは65センチ。現代的に改修する場合、75センチというのが一般的な寸法で、多くの銭湯ではこの寸法が採用されている。ところが松乃湯では1メートルもの間隔が設定されている。これはスーパー銭湯なみのゴージャススケールといえる。
さらにゴージャスと言えば、浴室の中央に配置された吹抜け空間が特徴的。ステンドグラスを用いた窓がある半屋内空間には、3種類もの浴槽が配置されている。これもスーパー銭湯クラスの設備で、銭湯の標準を大きく超えているといえる。
その他、床を冷たく感じさせないために、洗い場の床中央に常時湯が流れるように配管がされた設備も通常では見られない設備だし、浴槽の笠木(浴槽縁の最上部)が水平ではなく、斜めに施工されているもの珍しい。店の入口においては屋号がどこにも見当たらず、代わりに巨大な招き猫がお客さんを招き入れている。まるで銭湯の既存イメージに挑戦しているかのようだ。
オーナーさんにお店づくりの方法論を聞けば、ズバリ「銭湯らしく無い銭湯のイメージを自身で考え、設計士に伝えた」とのお答え。合理性や経済性を考えると、なかなか思い切った普請が難しいのが銭湯空間であるが、松乃湯のあり方はそれとらわれない経営発想を示している例と言えるかもしれない。今年10月には新たに炭酸泉が半露天部の浴槽に導入された。松の湯の進化は続く。
【DATA】まつのゆ
住所:練馬区石神井台7-11-1
営業時間:14:00~21:00(受付時間20:30まで、入浴時間21:00まで)
休業日:月・火曜日(臨時休業あり)
交通:西武新宿線[武蔵関駅]より徒歩5分
東京銭湯ぶらり湯めぐりマップ:89ページ30番
浴室中央に半屋外露天スペースが見える。オーナーの意向によりガラス張りとなった。
半屋外吹抜けエリア。浴槽縁の最上部は斜めに施工されている。
写真奥は、炭酸泉に改修されたばかりの浴槽。
略平面図