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★ビルイン型の伝統的銭湯!?★(1010誌 112号掲載バックナンバー)

「昔ながらの銭湯の間取りと造り」をそのままビルインさせた銭湯。鶴の湯を端的に表現するとそういう事になる。外観から見るとビルの下階が銭湯になっているだけなのだが、店内に入ると(高窓形式ではない事以外は)昔ながらの木造銭湯そのままの造りが色濃く残る銭湯だ。
 現在のビルは昭和52年竣工だから、築34年を経過したという事になるが、それ以上の風格と歴史的雰囲気を感じてしまうのはなぜなのか?オーナーの川端弥太郎さんにお話をうかがい、その訳を知る事になった。
 鶴の湯の内装では床材や、番台、化粧梁材、化粧柱材、建具など、そこかしこに高い品質の木材がふんだんに使われている。実はこれら現在の内装に使用されている木材のほとんどが、建て替え前の木造銭湯で使用されていた木材の再生利用品なのだ。前代の木造銭湯は関東大震災(昭和10年)後に建てられているので、これら再生利用の内装材は、おおよそ75年の時を刻んでいる計算となる。ビル銭湯なのに、不思議な風情と味わいがあるのはそういう訳かと納得。感動と感慨を覚えるオーナーからのお話であった。
 銭湯の文化とは、生活の中で使われながら育まれる「生活文化」であり、その様態は時代によって変化し続けていく。いわば現在進行形の文化であり、その意味で鶴の湯は時代に同調しながら「銭湯の歴史」を伝えていきた、生きた美術館といえるかもしれない。伝統的銭湯を後世に残していく一つの方法論がここにある。

【DATA】つるのゆ
住所:台東区東上野5-22-7
電話:03-3845-0268
営業時間:15:00~24:30
休業日:月曜日
交通:東京メトロ銀座線[稲荷町駅]より徒歩5分
東京銭湯ぶらり湯めぐりマップ:19ページ32番

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内装材として木がふんだんに使用されている。30年以上前に建築素材の再生利用というコンセプトで店造りをしていたということに、オーナーの先見性を感じる。


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番台の歴史は内装材の中でも一番古い。昭和3年に造られたというから、83年もの間使われ続けられている。番台に座る女将さんがいつも着物姿というのも鶴の湯の魅力のひとつ。


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外観の様子。半階分の階段を上がり、のれんをくぐる。のれんから先は昔ながらの銭湯の間取りとなる。


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ふんだんに木素材が使われている脱衣室。ただ古いだけでなく、手入れもきちんと行き届いる現役感。木の桶も嬉しい。
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by space88 | 2012-01-21 11:06 | ★1010/個性派銭湯セレクション
★配置が超個性的!吹抜け露天岩風呂のある銭湯★(1010誌 110号掲載バックナンバー)

 大きな岩風呂の露天風呂でゆっくりと湯を楽しむ。風呂好きで日々忙しい都会の人間にとって贅沢な癒しのイメージであるが、のぼり湯では日常的にこれが楽しめる。まさに「遠くの温泉より近くの銭湯」と言いたくなる空間だ。
 露天岩風呂が銭湯にあること自体は、それほど珍しいことではない。しかしのぼり湯が特徴的なのは、露天風呂の配置と置かれた岩の大きさにある。通常木造銭湯において、露天風呂はメインとなる浴室母屋の両サイドに配置されるケースがほとんどだが、のぼり湯は、母屋の中央に露天風呂が位置している。なぜこんな位置に露天風呂があるのか?銭湯建築設計者としてはとても気になるのだが、その理由は中普請の経緯にあった。
 昭和42年に創業したのぼり湯は、外観としては通常の関東型木造銭湯であった。しかし浴室の中央にどーんと岩が積み重ねられており、これが当時からお店の売りとなっていた。当初岩風呂はあくまで内風呂の空間であったが、平成20年の中普請時に岩の配置をそのままに改修することになった。木造中央部分の大屋根が大胆に取り払われることで、岩の内風呂が「吹抜け露天岩風呂」として生まれ変わったというわけである(図面参照)。
 時代はエコ。モノの再利用がうたわれる今日この頃。これだけの巨石を銭湯建築用材として使える時代は当分来ないであろう。なんとも贅沢な資材が再利用された銭湯である。

【DATA】のぼりゆ
住所:三鷹市井口5-5-18
電話:0422-31-7645
営業時間:16:00~23:00
休業日:水曜日
交通:JR中央線[武蔵境駅]よりバス[井口新田]下車、徒歩3分
東京銭湯ぶらり湯めぐりマップ:117ページ3番

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創業時は屋内の岩風呂空間として、この空間に屋根がかけられていた。以前は男女の仕切り壁も岩だけで構成されていたというから驚く。


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屋内の浴室空間。右手が露天風呂に通じる扉。


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図面:左手が改修前のレイアウト。
右手が現況のレイアウト。黄色いエリアが屋外空間となった。
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by space88 | 2012-01-21 10:53 | ★1010/個性派銭湯セレクション
★「×2」以上!の空間をもつ銭湯★(1010誌 109号掲載バックナンバー)

 なんと創業は都内最古の1773年。あけぼの湯の空間的特徴は、浴室空間が「二階建て」
になっていること。部分的ではなく、完全に二層分がサービス空間として提供されている銭湯は珍しい。浴槽メニューは水風呂を含めて12種類。しかもお湯は天然温泉!
 そのバラエティーに富む空間構成は、まず1階にエントランス/ロビ−/食事処/脱衣室/洗い場、そして露天風呂が配置されている。ここだけでも完全に通常の銭湯として完結できるのだが、これに加えてさらにもうワンセット、浴槽と洗い場が2階にも配置されており、他に二種類のサウナ、水風呂、そして写真の岩盤泉がある。上下階は内階段でつながれており、浴槽の湯量、カランの数、営業面積…いずれをとっても通常の二倍分、いやそれ以上の空間を誇る銭湯となっている。
 このような巨大銭湯となったのは、実は平成8年の改修時。もともと銭湯は二階だけの営業で、一階はテナントとして運営されていた。その後一階は空きテナントとなってしまったのだが「であれば一階も銭湯として営業面積を拡大してしまおう」となった。現在で19代目となる、伝統家業経営者の英断である。結果として近隣のスーパー銭湯や健康ランドにも負けない銭湯になった。土曜日曜は14台の無料駐車場が満車。パートさんに車の整理員をお願いしているという。いやはや、どこを切っても大きなスケールの銭湯だ。 

【DATA】あけぼのゆ
住所:江戸川区船堀3-12-11
電話:03-3680-5611
営業時間:15:30~24:00(日曜・祝日 14:00~24:00)
休業日:木曜日
交通:都営新宿線[船堀駅]より徒歩5分
東京銭湯ぶらり湯めぐりマップ:108ページ55番

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岩盤泉浴槽は2階に。もとは脱衣室として使用されていた空間。浴槽内にはさまざまな鉱石が粉末状にされて練り込まれたタイルが貼られている。


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2階の浴室空間は、オーソドックスな銭湯スタイル。


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1階の浴室空間には、個性的な浴槽が配置されている。


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by space88 | 2012-01-21 10:44 | ★1010/個性派銭湯セレクション

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


by space88
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