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★狭小空地を生かした、奥行きのある庭空間★(1010誌 108号掲載バックナンバー)

 大黒湯やタカラ湯をはじめとして、クラッシックな名銭湯が多い足立区エリア。五反野駅から徒歩5分ほどに立地している曙湯も、昭和32年築以来3回の中普請を経てなお木造銭湯の良さを現在に引き継ぐクラッシックな外観の銭湯だ。
 曙湯で着目したいのは、男側の浴室脇にある屋外空間。この空間には滝から池、岩の露天風呂、そして四阿(あずまや)風の休憩所までが一連の空間として配置されている。天然石の配置や、樹皮貼り仕上の壁、絶妙な植栽配置により実に良い雰囲気を生みだしている。昔ながらの職人さんのセンスと技に加え、時間の積み重ねと行き届いた管理が光る庭である。現代建築において、建物脇のほんのちょっとした空間をこれだけ充実感のあるものにしている例は、そうそうない。
 しかしこの空間を「古き良きもの」として片づけてしまってはもったいない。わずか幅約1m×奥行き3mほどの広さしかない庭に、実際以上の深い奥行きを感じるのはなぜか?ポイントは落差約3mの滝石と作庭要素の連続配置にある。まず滝を導く超縦長の自然石が背景となって視線が上方に広がる効果を生み出している。加えて滝石と浴槽の間には幾層にも形の異なる植栽や木々、灯籠や石橋などが重ねて配置されており、これが遠近感や奥行き感をもたらしている。さらに入浴者の視線(空間感覚)は、手前の岩浴槽、そして背後の休憩所へとつながっていく。
 街中の銭湯は、他業種の温浴施設に比べ、どうしても敷地の広さでかなわない。しかし、狭いながら銭湯にもできることもあるのではないだろうか?曙湯の屋外空間を見ていると、建物脇のほんのちょっとした狭小空間が、プラスαの有効な空間サービスを生み出す隠れたツボのように思えてくる。

【DATA】あけぼのゆ
住所:足立区足立4-22-3
電話:03-3886-0706
営業時間:15:00~24:00
休業日:木曜日
交通:東武伊勢崎線[五反野駅]より徒歩5分
東京銭湯ぶらり湯めぐりマップ:90ページ3番

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男側の露天岩風呂から庭を見る。正面のシダ類の影に超巨大な滝石がある。滝の落差は約3m。いくつもの作庭要素が池の横で重なり、空間に奥行きが生みだされている。

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男性側の休憩スペースから岩風呂越しに庭を見る。自然の形を生かした素材使いが粋だ。

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女側にも露天風呂がある。滝や池は無いが、品良くしつらえられた庭がワイルドな岩風呂にマッチして、風情ある雰囲気を醸し出している。
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by space88 | 2011-06-10 09:37 | ★1010/個性派銭湯セレクション

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


by space88
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