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★太陽光利用のエコ銭湯★(1010誌 105号掲載バックナンバー)

 「エコ」という言葉がまだ世間に全く認知されていなかった1980年、本気でエネルギー削減について取り組みをはじめた銭湯があった。江東区の稲荷湯である。同湯が採用しているのは、太陽熱温水器パネルによる水の循環加温システムだ。
 太陽熱温水器とは、簡単に言えば、太陽の輻射熱がガラス管の中に通された銅製チユーブに循環する水を温めるというもの。太陽熱のエネルギー変換効率は40%。シンプルなシステムながら、今流行の太陽光発電の3〜4倍近い効率の高さを誇る。実際には足りない熱量をガス燃料で補ってはいるが、それでもガス使用量は通常銭湯の1/2程度だという。
 それにしても、なぜ1980年当時にこれだけの設備投資を決断するに至ったのだろうか?稲荷湯三代目の寛信さんにお話をうかがった。「これを建てたのは、私の祖父にあたる次左衛門です。戦後の薪集めやオイルショックなどの苦労の経験から、安く安定した燃料は何かということを早くから模索していたようです。ただ、建設当時は話題にものぼりませんでした」とのお話。しかしこの太陽熱温水器により燃料使用量を削減しただけでなく、その後も重油からガスへの転換などに一早くとりくんだことが評価され、2007年に江戸川区とえどがわエコセンターが進める『もったいない運動えどがわ』で最高賞の「もったいない大賞」を受賞するに至る。築後27年を経てはじめて社会的に評価されたかっこうとなった。
 近年、太陽光発電(光を直接電力に変換するが、発電電力量当たりのコストが他の発電方法に比べて2〜3倍と割高)や風力発電に偏りがちだった自然エネルギー利用の分野でも、太陽「熱」エネルギーの利用を模索し始めているという。稲荷湯が1980年に始めたことに、ようやく世の中が追いついて来たのかもしれない。

【DATA】いなりゆ
住所:江戸川区平井2-9-3
電話:03-3685-0126
営業時間:15:00~23:30
休業日:火曜日
交通:JR総武線[平井駅]より徒歩8分
東京銭湯お遍路マップ:102ページ江戸川区8番

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屋上に設置された太陽熱温水パネル。76ユニットのパネルが並ぶ様は壮観だ。

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太陽熱温水パネルの接近写真。10本のガラス管が1ユニットとなっている。

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1階の浴室写真

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ガラス管内部の断面図:銅製チューブの内側に水が循環し、太陽の輻射熱で暖められる。ガラス管と銅製チューブの間は真空となっており、一度温められた熱が外に逃げない仕組み(魔法ビンの原理)になっている。
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by space88 | 2010-11-01 18:17 | ★1010/個性派銭湯セレクション

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


by space88
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