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 「うちの長女は、二才の時から番台に上がってますからね。」かなりの英才教育である。子育ての思い出話を、明るく人なつっこい笑顔で話すのは、この店の看板女将。三人の娘さんを番台〜フロントで育てた。本人希望により名前は伏せるが、本当にお風呂好きで、毎週の休日は、今となっては立派に成人した娘さんたちと都内のお風呂巡りをする。
 ひと昔前、銭湯は町の社交場であった。「娘たちは、脱衣室で育ったんですよね。いろんな人に面倒を見てもらいながら。時にはお風呂も入れてもらったりして。本当に皆さんには感謝しています。」「フロントにしたのは、娘の要望なんです。当時中学生だった娘が番台に立つのに、男の脱衣室を見る事を同級生に冷やかされて、気にしていたらしくてねぇ。」「誕生日会はお風呂場でやったんですよ。広いからクラスのみんなを差別無く呼べたんですよね。その時呼んだ子たちには今でも覚えてもらってますよ。」まるで絵に描いたようないい話だが、本当の話。
 女将の信条は「お客さんに気持ちい〜な〜」と思って帰ってもらうこと。そのためには、毎日の仕事にぬかりが無い。平均的な一日を紹介すると、まず起床して、食事を済ませたら、脱衣場の掃除と鉢植えグリーンの世話を開店時間の15:30までに慌ただしく、しかし丁寧に行う。開店後もタイミングを見て頻繁に店内の掃除。お店の営業時間は午前1:00までだが、ここからがすごい。まず終業後は、当日のサービスを反省しながら、店の風呂に入る。風呂上がりに、ご主人とともに遅い夜食をとると、この時点で午前二時を過ぎる。その後浴室の掃除にはいり、最後に(翌日光が当たる浴室に)鉢植えグリーンの移動をすませ、長い一日が終了する。この時点で朝の五時をまわる。風呂屋の宿命とは言え、ハードな毎日だ。
 この店を支えているのは、何と言っても女将の笑顔とフロントでの会話。フロントには快活な声が絶えない。年々数が減っていく銭湯にあって、店の外観だけでなく、お客さんとの近しいコミュニケーション形態をも今に残す、「昔ながら」のコミュニティ銭湯である。
(1010誌85号に掲載)
■入湯店名:上越泉(中野区)
■利用料 ¥430
■営業時間 15:00〜24:00 ■定休日 毎週月曜日
■設備:座風呂、立ちシャワー、サウナ、露天風呂
■付帯設備:
■記録:天気_晴れ 入湯時間_15:00〜15:55
■暦:銀河の月18日 KIN162 白い律動の風
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by space88 | 2007-02-24 16:34 | ☆東京の銭湯

大星湯(新宿区)

★AED救命×盆栽。地域のためのマジモードコミュニティ施設★(1010誌 84号掲載バックナンバー)

■「AEDってご存知ですか?自動体外式除細動器といって、簡単に言えば心臓が突然止まりそうになった時に電気ショックを与えて、心臓の動きを元に戻すものです」熱っぽく語るのは大星湯三代目の若旦那、Mさん。いきなりで面食らったが、AEDというこの機器は数年前に医師や救急救命士に限らず、一般市民に使用が認められたもので、それを全国の公衆浴場で一番最初(平成17年)に設置したのが大星湯なのだそう。それがフロント横の棚に常設されている。
 Mさんは、応急手当普及員の資格を取り、平成10年から救命講習会の企画・指導を始めた。年に数回行われる講習会の受講生は主に銭湯のお客さんたちで、現在1030人の受講者が生まれている。講習会の内容は、異常時の「意識確認・沈没防止・湯栓抜き・人体搬出の仕方・AEDの使い方」など。銭湯において、風呂場での緊急の対処法を講習すると、救命受講経験者が、たいていの時間帯はお客さんとして利用していることになり、異常時に早期発見対応の可能性が高くなる。客層が高齢化している現在、その意義は大きい。
 そんなシリアスイメージの特徴がある一方で、大星湯にはソフトイメージのもう一つの特徴がある。盆栽である。毎週取り替えられる盆栽が置かれるのはフロントの前。担当は二代目で現在の社長さん。40年のキャリアと、その人がらから紡ぎ出される作品は、人をひきつける癒しのオーラを発しているかのよう。盆栽が何気ないコミュニケーションのきっかけとなり、お客さん側とお店側、あるいはお客さん同士の交流が生まれる。世知辛いこのご時世、そんな小さなコミュニケーションが大切なのではないかと思う。
 「地域のためのコミュニティ施設」とは銭湯に望まれる姿としてしばしば語られるフレーズであるが、大星湯はその機能を「救命・盆栽」というジャンルを通じて具現化している。Mさんは語る。「銭湯は深夜まで開いています。地域の救急の拠点になりたい。」ボランティアである。本気モードである。

【DATA】たいせいゆ
住所:新宿区市谷台町18-3
電話:03-3351-7625
営業時間:14:30~24:30
休業日:月曜日
交通:都営新宿線[曙橋駅]より徒歩6分

■記録:天気_晴れ 入湯時間_15:00〜15:30 入湯者数_5人〜4人
■暦:律動の月3日 KIN91 青い宇宙の猿
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by space88 | 2007-02-15 21:36 | ★1010/ちょいとひとっ風呂

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


by space88
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