上越泉(中野区)

★現代に残る「昔ながら」のコミュニティ銭湯★(1010誌 85号掲載バックナンバー)

 「うちの長女は、二才の時から番台に上がってますからね。」かなりの英才教育である。子育ての思い出話を、明るく人なつっこい笑顔で話すのは、この店の看板女将。三人の娘さんを番台〜フロントで育てた。本人希望により名前は伏せるが、本当にお風呂好きで、毎週の休日は、今となっては立派に成人した娘さんたちと都内のお風呂巡りをする。
 ひと昔前、銭湯は町の社交場であった。「娘たちは、脱衣室で育ったんですよね。いろんな人に面倒を見てもらいながら。時にはお風呂も入れてもらったりして。本当に皆さんには感謝しています。」「フロントにしたのは、娘の要望なんです。当時中学生だった娘が番台に立つのに、男の脱衣室を見る事を同級生に冷やかされて、気にしていたらしくてねぇ。」「誕生日会はお風呂場でやったんですよ。広いからクラスのみんなを差別無く呼べたんですよね。その時呼んだ子たちには今でも覚えてもらってますよ。」まるで絵に描いたようないい話だが、本当の話。
 女将の信条は「お客さんに気持ちい〜な〜」と思って帰ってもらうこと。そのためには、毎日の仕事にぬかりが無い。平均的な一日を紹介すると、まず起床して、食事を済ませたら、脱衣場の掃除と鉢植えグリーンの世話を開店時間の15:30までに慌ただしく、しかし丁寧に行う。開店後もタイミングを見て頻繁に店内の掃除。お店の営業時間は午前1:00までだが、ここからがすごい。まず終業後は、当日のサービスを反省しながら、店の風呂に入る。風呂上がりに、ご主人とともに遅い夜食をとると、この時点で午前二時を過ぎる。その後浴室の掃除にはいり、最後に(翌日光が当たる浴室に)鉢植えグリーンの移動をすませ、長い一日が終了する。この時点で朝の五時をまわる。風呂屋の宿命とは言え、ハードな毎日だ。
 この店を支えているのは、何と言っても女将の笑顔とフロントでの会話。フロントには快活な声が絶えない。年々数が減っていく銭湯にあって、店の外観だけでなく、お客さんとの近しいコミュニケーション形態をも今に残す、「昔ながら」のコミュニティ銭湯である。

【DATA】じょうえつせん
住所:中野区野方1-51-10
電話:03-3388-9445
営業時間:15:30~25:00
休業日:不定休
交通:JR中央線[中野駅]より徒歩10分

写真(a)浴槽から望む、清潔感あふれる浴室。
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写真(b)かわいい緑が沢山の、明るいロビー。
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写真(c)狭いながらも、い〜感じの露天風呂スペース。
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写真(d)フロント明るい声が聞こえてくる。昔ながらの外観。
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by space88 | 2007-04-09 11:10 | ★1010/ちょいとひとっ風呂

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


by space88
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