大黒湯(北区)
2007年 06月 09日
コミュニティ・セントウ事業に参画した第一号店である大黒湯。この事業は、地域の活性化と銭湯の活性化の相互作用を目指す構想で、コミュニティ部門=いわゆる公民館を二階に造り、区が運営するというものである。銭湯のコミュニティ施設としての位置付けは古くから取り上げられているが、行政と連動した施設として、それを最初に実現化したのがこちら北区の大黒湯であった。しかしコミュニティ機能は、ハードだけで成立する問題ではない。むしろソフトの方が重要視されるべきである。現在コミュニティ部門の運営は区が単独で行っているようだが、当初の目的を継続するためには、銭湯の機能と公民館の運営が相互リンクする「プログラムづくり」と「運営体制」が望まれるところである。
そんな中にあって、銭湯本体のソフト面においてのコミュニティ機能はもちろん大黒湯の大きなテーマである。地域がら高齢者が多いので、ご主人はコミュニケーションの基本である「お客さんとの対話」を大切にしている。時には長話となることもあるが、それもお客さんにとっては大切な時間。21年前のコンセプトを今できることとしてフロントで継続している。単純なことが大切である。
ハード面=施設面では、昨年浴室をリニューアルしてイメージを一新した。もとの建築躯体が堅牢な造りなので、内装が新しくなれば、築21年の建築にはなかなか見えない。浴室はトップライトからの自然光で、ビル銭湯形式ながら日中はとても明るい。男性側には露天風呂もあり、旅館風な雰囲気を演出している。サウナ空間が広めなのも特徴的で、サウナ利用者にはちょっとした専用のカランスペースもある。
「新しい物好き」と自認する大黒湯のご主人。確かに20年前のコミュニティ・セントウ事業には、銭湯経営の新しいビジョンへの可能性が内在していたに違いない。銭湯経営のフロンティア精神が、この建物とともに次世代に受け継がれ、そして発展していってほしいものである。
【DATA】だいこくゆ
住所:北区上中里
電話:03-3919-4476
営業時間:15:00~24:00
休業日:第2・4火曜日
交通:JR京浜東北線[上中里駅]より徒歩2分
写真(a)トップライトからの光が明るい浴槽。
写真(b)男湯には温泉風情の露天風呂あり。
写真(c)足ツボを刺激する玉石敷き。
写真(d)広めのサウナはゆったりくつろげる。