大黒湯(中野区)

★面白浴室空間発見!サウナ室が宙に浮かぶお風呂屋さん★(1010誌 94号掲載バックナンバー)

 「ちょっと古い写真を持ってきますよ」取材冒頭に見せていただいたこの写真、大黒湯創業当初(昭和7年)のものだという。戦前の貴重な写真。辺りに高い建物はなく、煙突がランドマークとなってそびえ立つこの地の風景。右手に立つのが創業者の大江久蔵さん、幼年時代の2代目久也さんをはさみ、奥様のふささんが中央に立っている。写真に写る外観からは、浴室が高窓型の構造形式となっていることがうかがえる。しかし屋根の形状は単純な切妻屋根で構成されており、反り(そり)や入母屋(いりもや)の特徴を持つ=寺社型のファサード(入口正面外観)ではないことが予想される。いわゆる東京型レトロ銭湯のプロトタイプと言ったところか。
 お話をうかがったのは、上記写真に写る久也さんの息子さん、3代目の久三(ひさみ)さん。写真の木造銭湯は戦災を免れ、昭和の終わりまで中普請を繰り返しながら50年以上存続していたという。そして平成元年に、ビル型銭湯として現在の店舗に生まれ変わった。以降、中普請などの工事はしていない。
 早速浴室に案内されると、一風変わった浴室のレイアウトに目が奪われる。正面の壁から片持ちで張出しているのは、なんとサウナ室。水風呂を含め別料金のエリアが中2階に
振り分けられている。ここにアプローチするには、浴室内の階段を使う。浴槽も中央に張出している珍しいレイアウト。それでいてカランの数はしっかりと20以上ある。撮影時、どの角度からファインダーをのぞいても面白く見え、浴室内を移動する度にワクワク感が生まれる。「他に無い銭湯を創りたい」という久三さんの思いが込められた空間だ。
 「なんとかこの銭湯を存続させる」というのが一番の思いと語る久三さん。聞けば、既に独立された息子さん夫婦に近くお子さんが授かる予定だという。大黒湯としては5代目にあたるお子さん。写真とお話を通じてではあるが、5世代にわたる歴史をお聞かせいただき感慨ひとしお。大黒湯の看板、是非5代目まで引き継いでいただきたいものだ。

【DATA】
住所:だいこくゆ
電話:03-3381-9690
営業時間:15:00~25:00
休業日:曜日
交通:東京メトロ丸ノ内線[新中野駅]より徒歩3分


写真(00)昭和初期の貴重な写真。
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写真(01)緑が心地よく手入れされた外観。
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写真(02)広めのロビーでゆったりと休憩。
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写真(03)正面の壁から張出しているのはサウナ室。
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写真(04)こんな視点から空間を観る銭湯、なかなか無い。
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写真(05)フロントに立つ3代目店主、久三さん。
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by space88 | 2008-10-09 10:11 | ★1010/東京銭湯物語

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


by space88
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