個性派銭湯セレクション その十六 文京区_鶴の湯

★日本一大きな富士山ペンキ絵のある銭湯★(1010誌 114号掲載バックナンバー)

 古き良き関東型銭湯の特徴のひとつとして「浴槽の背景に富士山ペンキ絵が描かれている」という点があげられる。浴槽にはられたお湯から連続するように、湖や海の背景にそびえる富士山が描かれていることが多く、このスタイルはペンキ絵のことを「背景画」と呼ぶゆえんともなっている。 
 今回取材した文京区、鶴の湯もこの点は同じで、浴槽背景の男女壁それぞれに富士山が描かれている。今は亡き早川ペンキ絵師の作品だ。
 ところが2011年末、既存の二つの富士山に加えてもう一つの富士山が鶴の湯の浴室に描かれた。三つ目の富士山の登場だ。新たな富士山が描かれた場所は、浴槽が配置する側と反対側の壁。発案は鶴の湯をきりもりする三代目女将の中島さん。「お客さんが大きな浴槽につかりながら富士山を眺めたら、ゆったりとした気分になってもらえるだろうな、と思って」というのがその理由。
 創業90年という老舗銭湯を切り盛りする中島さんは「昔ながらの銭湯」にこだわり、少しずつ改修を重ねて鶴の湯を維持している。一時はフロント化の計画もあったが、父の意見に反対し、あえて番台形式を継続した経緯がある。三つ目に描かれた富士山ペンキ絵は、私の知る限り銭湯では日本で一番大きなものとなった。また、浴槽の反対側の壁に描かれた富士山は都内でも二カ所しかない。古き良き銭湯。しかし個性派。これは「昔ながらの銭湯を守りたい」という中島さんの思いが、攻めの姿勢で表現された空間なのかもしれない。

【DATA】つるのゆ
住所:文京区千駄木5-32-2
電話:03-3821-2514
営業時間:16:00~24:00
休業日:土曜日
交通:東京メトロ南北線[本駒込駅]より徒歩7分
東京銭湯ぶらり湯めぐりマップ:14ページ14番

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浴槽から眺める富士山は何とも雄大。中島盛夫ペンキ絵師により描かれ、クラッシックなのに斬新な空間となった(図中壁3の位置)


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壁2(男湯)に描かれた富士山(早川ペンキ絵師による)


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壁1(女湯)に描かれた富士山(早川ペンキ絵師による)


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鶴の湯の略平面図
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by space88 | 2012-10-17 11:16 | ★1010/個性派銭湯セレクション

東京都内の銭湯や温泉を中心とした、建築士:今井健太郎の風呂日記。雑誌1010掲載エッセイのバックナンバーもこちらでご覧頂けます。


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