個性派銭湯セレクション その十四 三鷹市_のぼり湯
2012年 01月 21日
大きな岩風呂の露天風呂でゆっくりと湯を楽しむ。風呂好きで日々忙しい都会の人間にとって贅沢な癒しのイメージであるが、のぼり湯では日常的にこれが楽しめる。まさに「遠くの温泉より近くの銭湯」と言いたくなる空間だ。
露天岩風呂が銭湯にあること自体は、それほど珍しいことではない。しかしのぼり湯が特徴的なのは、露天風呂の配置と置かれた岩の大きさにある。通常木造銭湯において、露天風呂はメインとなる浴室母屋の両サイドに配置されるケースがほとんどだが、のぼり湯は、母屋の中央に露天風呂が位置している。なぜこんな位置に露天風呂があるのか?銭湯建築設計者としてはとても気になるのだが、その理由は中普請の経緯にあった。
昭和42年に創業したのぼり湯は、外観としては通常の関東型木造銭湯であった。しかし浴室の中央にどーんと岩が積み重ねられており、これが当時からお店の売りとなっていた。当初岩風呂はあくまで内風呂の空間であったが、平成20年の中普請時に岩の配置をそのままに改修することになった。木造中央部分の大屋根が大胆に取り払われることで、岩の内風呂が「吹抜け露天岩風呂」として生まれ変わったというわけである(図面参照)。
時代はエコ。モノの再利用がうたわれる今日この頃。これだけの巨石を銭湯建築用材として使える時代は当分来ないであろう。なんとも贅沢な資材が再利用された銭湯である。
【DATA】のぼりゆ
住所:三鷹市井口5-5-18
電話:0422-31-7645
営業時間:16:00~23:00
休業日:水曜日
交通:JR中央線[武蔵境駅]よりバス[井口新田]下車、徒歩3分
東京銭湯ぶらり湯めぐりマップ:117ページ3番
創業時は屋内の岩風呂空間として、この空間に屋根がかけられていた。以前は男女の仕切り壁も岩だけで構成されていたというから驚く。
屋内の浴室空間。右手が露天風呂に通じる扉。
図面:左手が改修前のレイアウト。
右手が現況のレイアウト。黄色いエリアが屋外空間となった。